コンビニエンスストア最大手「セブン―イレブン」の運営本部と元加盟店主が契約解除の理由を争った訴訟で、大阪地裁は23日、セブン側の訴えを認め、元店主に店舗の明け渡しと約1450万円の賠償を命じる判決を言い渡した。元店主の請求は棄却した。横田昌紀裁判長は、契約解除は元店主の接客態度が理由で、24時間営業の打ち切りは関係ないと判断した。元店主は控訴する方針。

 訴えていたのは「セブン―イレブン東大阪南上小阪店」の店主だった松本実敏(みとし)さん(60)で、人手不足から24時間営業を独断で中止した。契約解除は時短営業の意趣返しで、独占禁止法で禁じられた「優越的地位の乱用」に当たると主張していた。

 判決などによると、松本さんは2012年、運営本部の「セブン―イレブン・ジャパン」(東京)と契約を結んで開業したが、従業員の人手不足の慢性化で自身の過重労働が続いた。19年2月から、深夜から早朝まで店を閉めた。セブン側は10カ月後、相次ぐ利用客の苦情を理由に加盟店契約を解除した。

 判決は「利用客への乱暴な言動を含む店舗への苦情は近隣店に比べて群を抜いて多かった」として、運営本部のブランドイメージや信頼を低下させた接客対応が解除理由だったと認定。「時短営業を拒絶する目的とは言えない」と判断した。 松本さんは記者会見で、「セブンの主張を一方的に認める不当な判決だ」と批判。セブン―イレブン・ジャパンは「主張が全面的に認められたもので妥当な内容だ」との談話を出した。

 松本さんは解除後の20年1月に営業を中止したが、セブン側の措置に反発して店舗の引き渡しには応じなかった。セブン側は松本さんを相手取り店舗の明け渡しと損害賠償を求めて提訴。松本さんも契約解除の無効を求める訴えを起こし、互いに訴え合う法廷闘争が続いていた。

 セブン側は21年3月、松本さん側が再三にわたる明け渡し要請に応じないとして、賃貸契約を結ぶ地主の了解も得て、既存店舗の駐車場に仮設店舗を建設する計画を表明。2カ月後に営業を始めており、「セブン―イレブン」の看板がかかった二つの店舗がわずか5メートル間隔で隣接する異様な光景になっている。

 一方、松本さんの訴えは、「24時間営業」が当たり前だったコンビニ業界に一石を投じ、労働環境が見直されるきっかけにもなった。公正取引委員会は21年4月、加盟店制度を巡る指針を改定。コンビニ各社は時短営業を望む加盟店主との協議を拒めば、「優越的な地位の乱用」を禁じる独占禁止法に違反する恐れがあることを明記した。(毎日新聞)