一部の地域で絶大な人気を誇っていたコンビニエンスストア「ココストア」「エブリワン」のファンに朗報だ。

2015年12月にココストアグループがファミリーマート傘下となって以降、店舗が減り続けていた両店だったが、今夏まで残存していた店舗の多くが改名したうえで、業態もそのままに営業を続けることが明らかになった。

◆「店内厨房」を武器にしていた「ココストア」

「ココストア」は1971年に名古屋の食品商社「盛田」(1665年創業、ソニー創業者・盛田昭夫氏の実家)の系列企業「山泉商会」(のちに「イズミッ ク」に改名)のコンビニ事業部として創業、1972年には株式会社ココストアとして分社化された。ココストア1号店の藤山台店(愛知県春日井市)は「日本 初の本格的コンビニエンスストア」としても知られている。

ココストアでは、一部の大型店舗に「ココ・デ・クック」「ココ・デ・ベイク」と称する本格的なベーカリーと厨房を備えており、24時間「焼き立てパン」 「出来立て弁当」を提供していたほか、店内で製造される「ばくだんおにぎり」は名物商品となっていた。また、2012年には、人気手羽先居酒屋チェーン 「世界の山ちゃん」とのコラボ商品を展開するなど、名古屋発祥企業らしい商品ラインナップも行っていた。

◆「九州人好み」で人気があった「エブリワン」

一方の、「エブリワン」は1994年に九州最大手のスーパーであった「ラララグループ・寿屋」(熊本市)により「コトブキヤ・コンビニエンスシステムズ」として創業した。

エブリワンの一番の特徴は、当時大手スーパーだった「寿屋」とその子会社「ことぶきベーカリー」などのノウハウを生かした本格的なベーカリーと厨房を店 内に設置し、24時間「焼き立てパン」「出来立て弁当」を提供できるようにしたことで、熊本の有名ラーメン店とコラボするなど「九州人好み」の商品を数多 く取り揃え、大手コンビニエンスストアと一線を画した商品ラインナップは地元住民に絶大な支持を受けることとなった。

エブリワンは、1999年にはリョーユーパングループ(福岡県大野城市)の「RIC」(リック)などと経営統合して規模を拡大するも(RICの屋号は維 持)、寿屋の経営悪化に伴い、2001年にはココストアグループと経営統合した。寿屋はその後、民事再生法を申請して2002年にスーパーマーケット業態 を廃止している。

「店内厨房」を武器に戦ってきた両社の合流は、半ば必然的なものだったと言えるかも知れない。合併後は、エブリワンにおいてもばくだんおにぎりの販売を開始するなど、ココストア・エブリワンで、双方の人気商品の相互販売も行われるようになっていた。

◆規模拡大に挑むもファミマに買収、店舗激減……風前の灯に

ココストアグループは、その後も中堅スーパーマーケット・カスミの傘下だった「ホットスパー」、ココストア分社後にイズミックが運営していた「タックメ イト」(屋号は維持)など、全国各地のコンビニエンスストアチェーンを傘下に収めて拡大路線を目指したものの、2015年12月にファミリーマートがココ ストアグループを買収。ココストアグループの店舗は、ファミリーマートへの業態転換が進んでいた。

ファミリーマートに転換したココストア・エブリワンの店舗は、ごく一部の物流体制が整っていない店舗(おもに離島)などを除いて殆どの店で店内ベーカ リー・店内厨房が廃止されてイートインコーナー・休憩所などに改装、商品もファミリーマートのものに統一されており、これまで「焼き立てパン」「出来立て 弁当」などを求めて立ち寄っていた客からは不満の声が上がっていた。

◆エネルギー大手の「ミツウロコ」傘下で新スタート

しかし、ココストア・エブリワンの歴史はここで終わった訳ではなかった。

ココストア・エブリワンの一部の店舗と、タックメイト・RICの大部分が、ファミリーマートから再び分離され、別会社に引き継がれることになったのである。

これらの店舗を引き継ぐのは、エネルギー大手の「ミツウロコグループホールディングス」。ミツウロコは、これまでココストアとエブリワンが特徴としてい た「焼き立てパン」「出来立て弁当」を新ブランドの中核と定めており、ミツウロコグループに経営譲渡された店舗では、これまでのココストア・エブリワンと ほぼ同様の品揃え・サービスを提供する予定だというから、ココストア・エブリワンのファンには安堵が広がりそうだ。また、タックメイトに改称する一部店舗 では、一部のタックメイトが行っていた「炊き立てごはん」の提供を新たに開始する店舗もあるとのことで、以前よりサービスが向上することになる。

経営譲渡される店舗は、2016年10月1日より業態・品揃えはほぼはそのままにミツウロコの運営による新体制に移行される。また、「ココストア」「エ ブリワン」店舗の屋号は、年内に順次「タックメイト」(本州、沖縄の店舗)か「RICストア」(九州の店舗)に統一されることになっている。

なお、一部の大手メディアなどにより、エブリワンとココストアが8月中に全店閉店、もしくは全てファミリーマートに転換するとの報道がなされていたが、これは完全な誤報である。

◆生き続けるココストア・エブリワンの血――今後は新規出店も

一部店舗の存続が決まったものの、今回ミツウロコグループに経営譲渡される店舗は主に茨城、東海、九州、沖縄本島などに偏っており、全ての店舗がファミ リーマートへと転換してしまう地域も多くある。さらに、ココストアの本社があった名古屋市ではココストアつつい店以外のココストア全店舗が、エブリワンの 本社があった熊本市ではエブリワン全店舗がファミリーマートへの転換することが決まっている。これらの地域のココストアファン・エブリワンファンは、今後 は旅先などで、かつてのココストア・エブリワンを偲ぶということになりそうだ。

一方で、ミツウロコグループでは、今後は新規出店も検討しているといい、店舗網の再拡大に期待したいところだ。将来、これまでココストアやエブリワンの店舗が無かった地域においても、両店の系譜を引き継いだ”思い出の味”と出会えることがあるかも知れない。

 

(HARBOR BUSINESS Online)