イオン傘下でコンビニエンスストア国内4位のミニストップは、出店を本格的に再開する。従来は全国を対象にしていたのを、今春から首都圏や近畿圏の一部地域に集中して出す。2025年2月期は新たに60店舗を出店する計画。ここ数年は閉店が出店を上回る中、23年秋には新規出店を担う専用部隊を復活させた。新規商品の開発や運営効率化も進めて利益改善を目指す。

23年11月時点で国内店舗数は1855店舗となり、18年2月期末(2264店)と比べて約2割減った。藤本明裕社長は日本経済新聞の取材に応じ「25年2月期以降は反転し、首都圏と近畿圏の住宅エリアに絞って出店を増やしていく」と明らかにした。

東西の都市圏に集中する戦略で採算の合う店舗を増やす。23年3〜11月は出店が7店舗で閉店の59店舗を大幅に下回った。ここ数年は同じ傾向が続いている。25年2月期は60店舗を新規出店する予定で、将来的には21年1月以来の2000店舗体制に戻すことも見据えている。

新規出店のため、23年9月に独立した組織として開発本部を復活させた。首都圏と近畿エリアに開発部隊を投入する。担当者の人員も外部採用を含めて増やしており、現状から5割増員する計画だ。

ミニストップはファストフード店とコンビニを組み合わせた「コンボストア」を特徴とし、これまで東北から九州まで日本全国を対象に出店してきた。ただ、少子高齢化や国内コンビニ市場の競争激化などを背景に売上高は振るわず、ここ5〜6年は出店数を抑え不採算店を中心に閉店を進めてきた。

24年2月期は9300万円の最終黒字を見込むが、18年2月期〜22年2月期までは5期連続の最終赤字だった。23年2月期に黒字転換したものの、子会社の韓国ミニストップ株を売却したことによる特別利益238億円の計上が寄与した。

コンビニ各社はスイーツや総菜などでヒット商品の開発にしのぎを削る。ミニストップは人気商品の「ハロハロ」などソフトクリームを中心としたファストフードに強みを持つが、それ以外の柱となる商品は育成途上だ。

売り上げをけん引していた「100円おにぎり」は22年に値上げしたことで客離れが起き、店内調理とレジ対応の両立といった店舗運営の複雑さで商品の販売機会を逃している。

ミニストップは閉店と並行して改革に乗り出しており、21年に新たなフランチャイズチェーン(FC)契約である「パートナーシップ契約」を導入した。人件費も含めたコストを差し引いた後の利益を加盟店と本部で分け合う仕組みに変えたことで、本部側が細かい店舗オペレーションまで改革に動きやすくなった。15分単位の業務スケジュール作成や調理工程の短縮などを通じ運営効率化を進めている。

セルフレジやアプリ経由の「モバイルオーダー」などファストフード店並みの設備投資も実施し、「一緒に他の商品も買ってもらえるような核となる商品の開発に着手している」(藤本社長)という。店舗運営の効率化と商品開発の両輪で1店舗あたり売上高の拡大を目指す。

国内では以前の勢いはないものの、コンビニ大手も出店を続けている。全国で約2万1500店舗を持つ最大手のセブン―イレブン・ジャパンは24年以降、年100店以上の店舗増を計画する。ファミリーマートは数十店の増加を見込み、ローソンは最大100店舗を増やす方針だ。

各社が年1000店以上を出店していた時代と比べ国内市場の飽和感が強まっているが、セブンの永松文彦社長は「(国内のコンビニ市場は)決して飽和していない」と強調する。高齢化などの影響で消費者の商圏は狭くなっており、日常的に利用できる範囲での出店を全国で増やす考えだ。

実店舗を中心とした「リアル」とネットの融合といった時代に合った経営が求められている。2月6日には異業種であるKDDIがローソン株のTOB(株式公開買い付け)を発表した。国内コンビニ市場は大手3社で全体の9割超の店舗数を占めており、中堅以下の企業は生き残りをかけた事業戦略が重要となる。ミニストップは今回の出店戦略の見直しとともに、他社にはない特徴や強みを磨き続けることが欠かせない。(日本経済新聞)