伊藤忠商事によるファミリーマートに対するTOB(株式公開買い付け)は、期限である24日を前に予断を許さない状況となっている。

海外の投資ファンドが特別配当を求めたり、買い付け価格の引き上げを要求したことでファミマの株価が上昇。株価が買い付け価格を上回れば株式市場の方が高く売れるため、TOBに応募しない株主が増える。最後まで気を抜けない展開となりそうだ。

伊藤忠側は特別配当を行わず、買い付け価格も引き上げない方針を明言したが、市場の期待は高まり、ファミマの株価は上昇。8月21日の終値は2258円と、買い付け価格の2300円近辺で推移している。関係者は「(応募の期限である)24日の株価が買い取り価格より高ければ、成立しない可能性は大きくなる」とみる。

伊藤忠にとって、ファミマの不振は経営上の大きな懸念だ。アマゾン・コムなど異業種との競争が激化する中、都市部に集中出店しているファミマは、「巣ごもり需要」に対応できずに苦戦している。

こうした状況を打開するため、伊藤忠はTOBでファミマを非上場化し、経営のデジタルトランスフォーメーション(DX)とファミマの顧客情報を連携させることで実店舗とインターネットビジネスの融合を狙う。だが、TOBが不成立なら、「スピード感の欠ける改革にとどまる」(伊藤忠の鉢村剛専務執行役員)だけに、何としてもTOBを成立させたい考えだ。鉢村氏は今月5日の決算説明会で「TOBが白紙撤回された場合と、成功した場合のファミマの未来図の違いをよく検討いただき、積極的に応募してもらいたい」と呼びかけた。(産経新聞)