コンビニエンスストア各社がオフィスビル内での無人販売に力を入れ始めた。

ローソンは今年中に1千カ所と4倍に増やし、セブン-イレブン・ジャパンも交通系ICカードで支払えるコーヒーマシンを新たに投入する。全国の店舗数が5万5千を突破し、1店舗当たりの業績が伸び悩む中、顧客により近い場所まで進出して需要を深掘りする。(山沢義徳)

「間食用のスナック菓子やナッツがよく売れる」と手応えを語るのは、ローソンの竹増貞信社長。1畳ほどのスペースに商品棚と無人レジを置く「プチローソン」を昨年7月始めた。

いわゆる「置き菓子サービス」は江崎グリコや森永製菓も手がけるが、冷凍庫なども備えるプチローソンは品ぞろえが多く、スマートフォン決済が可能。「職場の外へ出かける手間が省けると好評」(ローソン広報)で、拡大に向け商品ニーズの分析を急ぐ。

セブンは現在の約50カ所を、今年2月には100カ所まで増やす予定。商品補充などを専門会社に任せるローソンと異なり「近隣の店舗に運営してもらうためじっくり増やす」(古屋一樹社長)というが、最大手だけに態勢が整えば一気に拡大するのは間違いない。

オフィスでの無人販売が広がる背景には、「外出に時間がかかる高層ビルが増えたほか、社員食堂や売店の維持コストを減らしたい企業ニーズがある」(ファミリーマート広報)。同社は、弁当やサラダなどを売る「自販機コンビニ」を2100台以上展開。物流センターや病院からの引き合いも多く、来年2月に3千カ所に達する見込みだ。

一方ミニストップは、店内ベーカリーを備え、クラフトビールなどの「ちょい飲み」もできる有人の新型店を東京駅前のオフィスビルに開いた。「主に日中の営業で人繰りが容易」(広報)なのも利点という。

コンビニ業界では「店舗数の飽和」がささやかれて久しい。日本フランチャイズチェーン協会によると、前年同月比の既存店客数は昨年11月まで21カ月連続減と低迷する。人手不足も深刻な中、今年は新しい形の売り方が広がりそうだ。(産経新聞)