セブン&アイ・ホールディングスは3日、米国のコンビニ業界3位の「スピードウェイ」を210億ドル(約2兆2千億円)で来年3月までに買収すると発表した。

国内コンビニ事業の成長が鈍るなか、もう一つの柱と位置づける米国事業の拡大をねらう。

スピードウェイは米石油精製会社マラソン・ペトロリアムのコンビニ部門で、ガソリンスタンドを併設するコンビニ約3900店を展開する。セブン&アイ傘下の米セブン―イレブンは、米国首位の約9千店を抱える。今回の買収で、米国2位の約6千店を持つカナダの「アリメンテーション・カウチタード」を大きく引き離す。

日本企業による海外企業の買収では、武田薬品工業による2019年のアイルランドの同業大手シャイアー(約6・2兆円)、ソフトバンクグループによる16年の英半導体設計大手アーム(約3・3兆円)などに続く規模だ。

この日、電話で記者会見したセブン&アイの井阪隆一社長は「堅調な成長が予想される北米でマーケットリーダーになる千載一遇のチャンスだ」と述べた。新型コロナウイルスの収束が見通せない中での巨額買収については「コロナが永遠に存在するわけではない。5年先、10年先を考えたときに我々の成長にとって大きなメリットになる」と強調した。

スピードウェイ買収をめぐっては、今年2月にセブン&アイが独占交渉をしていることが明らかになったが、価格面で折り合えず、3月に交渉打ち切りを決めていた。その後、新型コロナの影響などでマラソンの業績が悪化。改めて売却の入札があったとみられる。

この経緯について、井阪氏は「私どもとして発表したことは一度もない。コメントは控える」とした。

セブン&アイは、国内コンビニ市場でも約2万1千店を展開する首位。一定の地域に大量出店する戦略で成長を続けてきたが、競争が激しくなってコンビニ店主の労働環境の悪化が社会問題となった。国内は「飽和」しているとの指摘もあり、ほかの大手と同様に、出店戦略や24時間営業の見直しに乗り出している。(朝日新聞)