「7pay(セブンペイ)」の失敗は、日本のキャッシュレス化の流れに冷や水を浴びせかねない。2020年東京五輪・パラリンピックの開催まで1年を切り、外国人観光客のさらなる増加が見込まれる中、キャッシュレス化を推進する政府にとっても悩ましい事態だ。

「コンビニ最大手の独自決済が広まれば、スマートフォンを持ち始めた高齢者にもキャッシュレス化が浸透すると期待していたのに…」。金融とITを融合したフィンテック企業の関係者は、セブンペイの不正利用問題がもたらす悪影響の広がりを懸念する。

日本のキャッシュレス比率は20%前後で、世界と比べても低水準とされる。要因の一つが、キャッシュレス決済に対する根強い不安感だ。消費者庁が昨年6月に行ったアンケートでも、キャッシュレス決済の一つ「QRコード決済」を使っていない479人の約1割が、「個人情報の流出」や「不正使用」への不安を理由に挙げていた。

キャッシュレスの推進は政府にとっても重要な施策で、令和7年までにキャッシュレス比率を4割に引き上げる目標を掲げている。

10月の消費税増税では、中小店舗などでのキャッシュレス決済にポイントを還元する施策を打ち出している。増税による負担の軽減とともに、「お得感」を出すことで、キャッシュレス化の推進を図る「一石二鳥の得策」(政府関係者)となるはずだった。1兆円を超えるとされる現金の流通や管理にかかる費用の抑制や、資金の流れが追いやすくなるため、犯罪抑止や脱税防止にも有益とされる。

大和総研の長内智主任研究員は「キャッシュレス決済には異業種からの参入も多い。業界としてどうセキュリティー水準を高めていくかが今後の課題だ」と指摘する。(産経新聞)