セブン&アイ・ホールディングスが、傘下の百貨店事業会社、そごう・西武を売却する方針を決めた。

 総合スーパーを祖業に、コンビニエンスストア、百貨店と「総合小売りグループ」を目指し拡大を続けたが、相乗効果を発揮し切れなかった。今後はコンビニ事業に経営資源を集中し、海外に活路を見いだす。

 セブン&アイがミレニアムリテイリング(現そごう・西武)を傘下に収めたのは2006年。ファッションを得意とする百貨店のノウハウで、業績が低迷していたイトーヨーカ堂の衣料品売り場をてこ入れする狙いだった。

 しかし、消費者が衣料品を買う場は「ユニクロ」など専門店やインターネット通販へ移る。百貨店の客離れが進み、06年に28あったそごう・西武の店舗数は10に減少。コロナ禍も追い打ちとなった。

 1974年に開店したコンビニチェーン「セブン―イレブン」は、家で作るのが常識だったおにぎりをヒットさせるなど斬新なビジネスモデルで急成長。現金自動預払機(ATM)の設置や自主企画商品の開発など相次ぐ新サービスで集客力を高めていった。

 総合小売りグループでありながら、もうけのほとんどをコンビニが稼ぐいびつな構造が続いているが、コンビニ市場も国内では競合他社も含めた出店増で飽和状態。セブン&アイは成長の見込める海外に照準を定め、2021年に2兆円超を投じて米国のガソリンスタンド併設型コンビニ、スピードウェイを買収した。不振の百貨店事業を抱え続けるだけの余裕はなくなった。

 株主や投資家らからは「成長するための決断がようやくできた」(アナリスト)と評価する声が多い。生き残りを懸け、今後も事業の選択と集中は続くとみられる。(時事通信)